ウイスキーはなぜ40%が多い?ウイスキーアルコール度数のヒミツ!

知識・雑学

ハイ!OKKAです。

ウイスキーのアルコール度数と言えば「40%」が一般的ですよね。

でも、昔は43%が多かったって知ってました?

そもそも、なぜこの度数になったのか。

今回は「ウイスキーアルコール度数のヒミツ」に迫ってみたいと思います!

そもそも「アルコール度数」って何?

アルコール度数とは、「アルコール飲料の中に含まれるエタノール(エチルアルコール)の体積を百分率(パーセント)で表した割合」のこと。

お酒が100mlの場合、その中の40mlがアルコールならば、「アルコール度数40度」ということになります。(ちなみに、「%」も「度」も同じ意味です。)

酒税法ではもうちょっと厳密で、
「アルコール分とは、温度15度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう」と規定されています。
液体は温度によって体積が変化するので、このように決められているんですね。

ウイスキーのアルコール度数が高いのは「蒸溜」するから

ウイスキーのアルコール度数が高いのはなぜか。
それは「蒸溜」させているからです。

ウイスキーは、まず、麦芽や他の穀物を発酵させるところから始まります。
発酵によって穀物の中の「糖」が「アルコール」に変わるのですが、発酵だけだとそのアルコール度数は大体「7~8%」くらい。(この状態のものを「モロミ」といいます。)

この「モロミ」を「蒸留」させることで、アルコール度数がぐっと上がります。
蒸留とは、液体を沸騰させてできた蒸気(湯気)を冷やして液体にもどすことです。
(小学校の理科でやりましたよね!)

蒸留機のしくみ
サントリー ホームページ (suntory.co.jp)より引用

エタノールの沸点は78.3℃、水は100℃です。そのため、アルコールは水よりも早く蒸気になります。

その性質を利用し、「アルコールは蒸気になっているが、水はまだあまり蒸気になっていない」という状態で冷やし、液体にすることで、アルコール度数が上がるというわけですね。

この蒸留という作業をおこなって造られるお酒が、「蒸溜酒」です。
ウイスキーをはじめ、ウォッカ、ジン、ブランデー、テキーラ、ラムなどがあります。

さらに、冷却した液体を再度蒸溜することで、アルコール度数はどんどん上がっていきます。
ウイスキーの場合、その上限が決められていて、スコットランドやアイルランドでは94.8%、バーボンウイスキーでは80%となっています。

ただし、蒸溜をやりすぎると、味わいはすっきりしますが、どんどん「純エタノール」に近づいていくので、今度は穀物由来の香味や味わいがなくなっていきます。
そのため、多くの蒸留所では、蒸溜後のウイスキーのアルコール度数を「約70%」にしています。
そのための蒸溜回数は、スコッチウイスキーの場合は「2回蒸溜」、アイリッシュウイスキーは「3回蒸溜」が基本となっています。

樽詰めの度数は「63.5%」が基本

蒸溜されたウイスキー(まだ樽熟成されていないので、この時のウイスキーは「ニューメイク」と呼ばれます。)は、まず、「スピリッツレシーバー」と呼ばれる容器に入れられます。

スプリングバンク蒸溜所の様子。後ろの銀色のタンクが「スピリッツレシーバー」。
東京ウイスキー奇譚 by 子供銀行券|noteより引用

この時点でのアルコール度数は「レシーバーストレングス」と呼ばれ、先ほど説明したように、約70%程度です。

ここからは、各蒸溜所によって違いはありますが、多くのウイスキーは少し加水されて「63.5%」に下げられます。
これには2つの理由があります。

一つ目は「この度数が最も樽の持ち味を引き出せる」とされているため。
もう一つは「業界内のメーカー間で売買したりするとき、同一条件(熟成年数や量)を担保するため」です。
ウイスキーの多くは「ブレンデッドウイスキー」に使われるので、こうした基準が決められているんですね。
ちなみに、バーボンの場合は「62.5%以下で樽詰め」と法律で決められています。

ただし、「シングルモルト」を売りにしている蒸溜所はこの限りではありません。
最近人気の「グレンアラヒー」では、使用する樽の種類や目標の熟成年数によって、63.5%、65%、67%、69.3%の4種類の樽入れ度数を使い分けています。

また、「ブルックラディ」では操業を再開した2001年以来、一貫してレシーバーストレングスの69%で樽詰めを行っているそうです。

こうして樽に詰められ、数年~数十年熟成されることによって、アルコール度数は増減していきます。

ほとんどの場合は、アルコールが揮発して、度数が下がりますが、まれにアメリカなどの乾燥地域では、アルコールより水の蒸発の方が早くなるため、熟成後のアルコール度数は高くなる場合もあります。

こうして、いわゆる「カスクストレングス」(樽出し原酒)のアルコール度数は「55%~60%」となります。
実質、このあたりが「ウイスキーのアルコール度数の上限」となります。
(もちろん例外もあって、プレミアムバーボン「ジョージ・T・スタッグ」はアルコール度数が約70%!熟成によりアルコール度数が上がった珍しい例です。)

ジョージ・T・スタッグ

そして、多くのウイスキーは、この原酒に加水することで、アルコール度数を下げてボトリング・販売しているんですね。

ウイスキーの基本的なアルコール度数は「40%」「43%」「46%」


現在販売されているウイスキーの多くは、アルコール度数が40%43%が主流。
46%のものも見かけることがあります。
もちろん、他の度数のものもありますが、基本的にはこの3つの度数のウイスキーがほとんどだと思います。(日本では酒税法の関係で37%のものもあります。)

今は40%のものを多く見かけますが、1980年代までは43%がほとんどでした。
この「43%」という度数は「エクスポートストレングス」と呼ばれ、国際市場で流通するスコッチウイスキーの伝統的な最低アルコール度数とされています。

では、なぜ「43%」という中途半端な数字だったのか。

それは、昔は「%」ではなくて、「プルーフ」という単位が使われていたからです。

「プルーフ」には2種類あって、「US(アメリカ)プルーフ」「UK(イギリス)プルーフ」があります。
アイルランドやスコットランドで伝統的に使われていたのは「UKプルーフ」の方。

でも、これがややこしいんですよね…。

USプルーフだと、「2で割った数字がアルコール度数」と簡単なんですが、(測定する温度も決まっていて、60℉(15.5℃)で測定します。)、UKプルーフではそうはいきません。

UKプルーフは、ウィキペディアによると、
「蒸留水の12/13の密度の蒸留酒の体積密度を100とするよう定められている」
とあります…。???

もうちょっと簡単に言うと、
華氏51℃(摂氏10.56℃)において容量率57.1%のエチルアルコール含有液を100プルーフとする
ということだそうです。

なんでこんなに中途半端な数字が使われるのかというと、それは「酒税」と関係があります。

昔のスコットランドで、まだアルコール度数の計測器がなかった時代、酒税をかけるためにアルコール度数を判別する方法として、「少量の火薬と混ぜて火をつける」という方法がとられていたそうです。


当然、よく燃える酒が上質とされ、酒税も高くなります。
この時の「良く燃える状態」のアルコール度数を「100プルーフ」としたんですね。
※ちなみに、プルーフとは「証明」という意味です。

1816年、精度の高いアルコール度数の計測器が発明されます。そこで、この「100プルーフ」のウイスキーを測ったところ、「57.1%」であることがわかったのです。

まとめるとこんな感じ。

アメリカ(USプルーフ)・・・アルコール度数を2倍した値。
アルコール度数40度のウイスキーだと40 x 2 = 80プルーフ

イギリス(UKプルーフ)・・・アルコール度数を1.75倍した値。
アルコール度数40度のウイスキーだと40 x 1.75 = 70プルーフ

ただ、ウイスキーが大量生産されるようになり、世界各地に輸出されるようになると、100プルーフもあったのでは高すぎて飲みにくい、とされるようになります。
また、蒸留所にしても、原酒をそのまま売ったのでは、あまり儲からない…。

そこで「飲みやすいアルコール度数」に下げるために、加水をして「75プルーフ」(つまり43%です!)にして販売されるようになったというわけ。

加水することで、ウイスキーを買う客は飲みやすくなり、メーカーはウイスキーの量も増えて、製造コストも下げられるので、WINWINだったということなんですね。

でも、「なぜ75プルーフになったか」というのは、かなり調べたけれどわかりませんでした。
確かに75という数字はそこそこキリのいい数字ではありますが、別に80とか70でもよかったんじゃないかと思うんですね。

※これはOKKAの個人的な考えですが、「100プルーフ=約57%」で、「100-57=43」となるので、これを基準にしたのではないかな、と推理します。
もし知っている方がいれば教えてくださいね!


こうして「43%」が、ウイスキーの基本的なアルコール度数となったわけですが、1991年に、EU(ヨーロッパ連合)の前身であるEC(ヨーロッパ共同体)において、「ウイスキーやスピリッツに関する統一基準」が定められます。
ここで、「ウイスキーの最低度数は40%」と決められるんですね。

なぜ40%になったかというのははっきり分かりませんが、ヨーロッパのもう一つの代表的な蒸留酒である「ブランデー」に合わせたからではないかと言われています。
実はウイスキーの容量も、1980年代くらいまでは750mlが主流だったのが、この統一基準で、ブランデーの基本的な容量である「700ml」と定められたそうです。

「下限の40%」にすることで、製造コストも酒税も削減できるということで、これを境に「40%」のウイスキーが増えていったというわけです。

あと残すは46%。
46%の代表的なウイスキーといえばこんな感じ。
・アラン10年
・グレンモーレンジィ ネクタードール
・ブナハーブン12年
・アードベッグ10年
・ビッグピート
・イチローズ ホワイトラベル

などなど。どれもこだわりのウイスキーって感じですね。

この「46%」というアルコール度数は、「冷却ろ過を行わなくても品質が安定しやすい」のだそうです。

ウイスキーを冷やすと、「フロック」という白い澱のような浮遊物が表れます。
このフロックには、ウイスキーの香りや味わいの元になる成分も含まれていますが、はっきり言って見た目が気持ち悪くなっちゃいます。

フロック(澱)が出たウイスキー
SAKEURU BY STOCK LAB (stock-lab.com)より引用

そこで、多くのウイスキーで行われているのが「冷却濾過(チルフィルタード)」なんですね。
ウイスキーをいったん冷やして濾過することで、このフロックを取り除き、もし購入後に低温下に置いても、フロックが出ないようにしているわけです。

ところが、アルコール度数が46%以上であれば、このフロックの成分が、アルコールに溶けた状態になるため、冷やしてもフロックが発生せず、冷却濾過の必要がなくなるのです。

冷却濾過をしないことで、ウイスキーが本来持つ香味や味わいの成分がそのまま残った状態になるため、「46%のウイスキーは美味い!」って言われています。
「ノンチルフィルタード(Non-chill Filtered)」とラベルに記載があれば、「冷却濾過をしない、本来の味と香りが楽しめるウイスキー」というわけです!

まとめるとこんな感じ。

40%…ヨーロッパの法律で決められた、ウイスキーの最低アルコール度数。

43%…「エクスポートストレングス」と呼ばれる、スコッチウイスキーの伝統的な最低アルコール度数

46%…冷却濾過を行わなくても品質が安定しやすいアルコール度数。

アルコール度数一つとっても、そこには歴史や法律、品質管理との関わりなど、いろいろな意味があったんですね。
というわけで、今回はこのへんで!

★40%のウイスキーの代表

★43%のウイスキーの代表

46%のウイスキーの代表

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