ウイスキーってそもそもどんなお酒?「ウイスキーの定義」について解説!

知識・雑学

ハイ!OKKAです。

仕事終わりに飲む、ウイスキーのハイボール、美味いですよね~。

でも、そもそも「ウイスキー」ってどんなお酒なのか。
何をもって「ウイスキー」と呼ぶのか。

今回は「ウイスキーの定義」について解説していきます!

ウイスキーの特徴は「樽熟成」にあり

ブランデー、ラム、テキーラ、ジン、ウォッカ、焼酎などなど、ウイスキー以外にも、蒸留酒はたくさんあります。

これらの蒸留酒と、ウイスキーとの違いは何なのか。
まず一つ目は「原料」です。

どの蒸留酒も、「植物を発酵させたものを蒸溜して作る酒」というところは共通していますが、原料に違いがあります。

蒸留酒の原料
ブランデー…主にぶどう。アップルブランデーなど、ぶどう以外の果実も使われることもある。
ラム…サトウキビを絞ったあとに作られる搾り汁や廃糖蜜。
テキーラ…竜舌蘭(リュウゼツラン)。
ジン…大麦、ライ麦、ジャガイモなど。(ジュニパーベリーなどの草根木皮で香りづけを行う。)
ウォッカ…トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦、じゃがいもなど。
焼酎…大麦、米、サツマイモ、そば、黒糖、トウモロコシ、ゴマなど。
ウイスキー…大麦、トウモロコシ、小麦、ライ麦など。

でも、こうしてみると、「原料がかぶっている」のもけっこうありますね。
特に大麦やトウモロコシは、ウォッカでも焼酎でもウイスキーでも使われています。

では、ウイスキーだけの特徴とは何なのか。

それが「樽熟成」です。

他の蒸留酒でも、樽熟成されるものはありますが、必ずしも必須ではありません。
しかし、ウイスキーだけは、基本的に「樽熟成を行わないとウイスキーと呼べない」ということになっています。

各国の「ウイスキーの定義」

まずは基本とされる「スコットランドのウイスキーの定義」について。
「スコッチウイスキー」は、イギリスの法律で、次のように決められています。

スコッチウイスキーの定義
①水、酵母、大麦麦芽(モルト)およびその他の穀物を原料とする。
②スコットランドの蒸溜所で、糖化、発酵、蒸溜を行う。
③アルコール度数94.8以下で蒸溜。
④容量700リットル以下のオーク樽で熟成させる。
⑤スコットランドの保税倉庫で最低3年間熟成させる。
⑥水と無味カラメル着色料以外の添加物を加えない。
⑦アルコール度数40%以上で瓶詰めする。

さすがスコットランド。かなり厳しく決められています。ただし、瓶詰めのみは、他の地域で行ってもよいとされています。
続いて「アイルランド」

アイリッシュウイスキーの定義
①穀物を原料とする。
②大麦に含まれる酵素によって糖化させる。
③酵母によって発酵させる。
④アルコール度数94.8以下で蒸溜。
⑤容量700リットル以下の木製樽で熟成させる。
⑥アイルランドまたは北アイルランドの倉庫で最低3年間熟成させる。

スコッチウイスキーと比べると、少しだけ緩くなってますね。「オーク樽」ではなく、「木製樽」となっています。とは言っても、ほとんどがオーク樽熟成です。ただ、最近は「桜樽」なども使われているそうですよ。

続いて「アメリカ」

アメリカのウイスキーの定義
①穀物を原料とする。
②アルコール度数95%以下で蒸溜。
オーク樽で熟成させる。(ただし、コーンウイスキーは熟成不要)
④アルコール度数40%以上で瓶詰めする。

アメリカでは、「バーボン」「テネシーウイスキー」「ライウイスキー」「コーンウイスキー」それぞれに法律があります。

バーボン・ウイスキーの定義
①原料の51%以上にトウモロコシを使用する。
②アルコール度数80%以下で蒸溜。
③内側を炭化皮膜化処理(焦がした)した新品のオーク樽で熟成させる。
④62.5%以下で樽詰めする。
⑤2年以上熟成させたものは「ストレートバーボンウイスキー」と呼ぶ。
⑥熟成期間が4年未満の場合はラベルに熟成年数を表記する。

テネシー・ウイスキーの定義
①上記バーボンウイスキーの定義を満たしている。
②テネシー州で生産されている。
③サトウカエデの木から作った炭で濾過処理をしている(チャコール・メローイング製法)。

テネシーウイスキーの代表が「ジャックダニエル」。ジャックダニエルは「世界で最も売れているアメリカンウイスキー」でもあります。

バーテンダーとバーファンのためのWebマガジン BAR TIMES (bar-times.com)より引用

ライウイスキーの定義
①原料の51%以上にライ麦を使用する。
②アルコール度数80%以下で蒸溜。
③内側を炭化皮膜化処理(焦がした)した新品のオーク樽で熟成させる。
④62.5%以下で樽詰めする。
⑤2年以上熟成させたものは「ストレートライウイスキー」と呼ぶ。

原料以外は、ほぼ「バーボン」と同じですね。ライウイスキーはライ麦由来の苦味とスパイシーさが特徴。「ジムビーム ライ」「ワイルドターキー ライ」「ノブクリーク ライ」など、バーボンウイスキーのラインナップに入っていることが多いですね。

https://third-base.com/より引用

コーンウイスキーの定義
①原料の80%以上にトウモロコシを使用。
②アルコール度数80%以下で蒸溜。
③熟成させる場合は、古樽もしくは内側を焦がしていない樽を使用する。

コーンウイスキーは「樽熟成を行わなくてもよい」ので、透明のものもあるそうです。便宜上「ウイスキー」となっていますが、どちらかと言えば「焼酎」に近い感じですね。
もちろん、樽熟成されたコーンウイスキーもあります。
また、コーンウイスキーを「内側を焦がしたオークの新樽」で熟成すると、法律上「バーボン」になります。「IWハーパー」はコーン比率が86%と高く、甘くて飲みやすいバーボンです。

OCEANS オーシャンズ|男の日常を楽しくする情報発信局より引用

次は「カナダ」

カナディアンウイスキーの定義
①穀物を原料とする。
②麦芽に含まれる酵素によって糖化させる。
③酵母によって発酵させる。
④カナダ国内で糖化、発酵、蒸溜を行う。
⑤容量700リットル以下の木製樽で熟成させる。
⑥カナダの倉庫で最低3年間熟成させる。
⑦アルコール度数40%以上で瓶詰めする。
⑧カラメル添加やフレーバリングが可能。

こうしてみると、コーンウイスキーという例外はありますが、最初に述べたように「樽熟成」がウイスキーには欠かせないということが分かります。
樽熟成を行うことで、アルコールの刺激が和らぎ、バニラや蜂蜜、フルーツなど、様々な味と香味が生まれるわけですね。

他と異なる「日本のウイスキーの定義」

ただ、「世界五大ウイスキー」の中で、日本だけが、他と異なる「ウイスキーの定義」になっています。

日本のウイスキーの定義
①穀物および水を原料とする。
②発芽させた穀物に含まれる酵素によって糖化させる。
③アルコール度数95%未満で蒸溜。
④上記の酒類が総量の10%未満にならない範囲で、アルコール、スピリッツ、香味料、色素を加えることができる。(ただし、白樺の炭で濾過したものは除く)
⑤蒸溜の際、ほかの物品の成分を浸出させたものは除く。

①~③はいいのですが、問題は④。これによって、「アルコールやスピリッツが添加されてもウイスキーと名付けて売ってもよい」ということになっているわけです。
さらに「樽熟成」もしなくていいんですね。

ちなみに、あの有名なイオンの「トップバリュウイスキー」はこんな感じ。

アルコール度数37% モルト・グレーン10%以上・スピリッツ90%未満

いやー、「日本のウイスキーの定義」ギリギリを攻めてますね~。
(でも、ちゃんと表示しているだけ誠実と言えます。多くの「スピリッツ添加ウイスキー」では、スピリッツの表示はあっても、割合は表示されていません。)

正直に言うと、個人的にはこういう「スピリッツ添加」のウイスキーはウイスキーとは認めたくないのですが、日本の法律がそうなっている以上、仕方ありません。まあ買わなきゃいいんだし。
ただ、ウイスキー初心者が、こうした「ウイスキー風味のスピリッツ」を「ウイスキー」だと思って買ってしまうのはちょっと避けたい…。(わかっていて買う分にはいいのですが…。)

なぜこんなことになっているかというと、他の国は「ウイスキーの品質を確保するための法律」であるのに対し、日本の法律はあくまで「酒税上の分類」という側面が強いからなんですね。

これはウイスキーに限らず、日本酒でもビールでも「品質確保」のための法律はほぼ皆無という状態です。
日本酒では、醸造アルコールや糖類、酸味料、アミノ酸塩などの添加が認められていますし、ビールにも米、とうもろこし、じゃがいも、でんぷん、糖類などの使用が認められています。(ドイツでは麦芽、ホップ、水、酵母のみ。)

どうも日本では「酒文化を守る」という意識が薄く、「酒税が取れればいい」って感じになってる気がします。

新しい「日本のウイスキーの定義」

この法律があるので、日本ではウイスキーにスピリッツが混ぜられたり、海外ウイスキーだけを使って日本でボトリングしたものを「ジャパニーズウイスキー」と名乗ったりしてもOKなんですね。

でも、このままでは「日本のウイスキー」の価値が守られないのではないかとして、日本洋酒酒造組合は「ジャパニーズウイスキー」の定義を定めました。2022年4月1日から施行されています。

ジャパニーズウイスキーの定義
①原材料は麦芽を必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること。
②国内の蒸留所で蒸留すること。
③原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること。
④日本国内で瓶詰めすること。

この件について、日本洋酒酒造組合の神田理事長は「ジャパニーズウイスキーの定義を明確化し、国内外に明らかにすることによってお客様の混乱を避け、日本で独自に進化してきたウイスキーの価値を引き続き訴求する」とコメントしています。

ちなみに、2022年現在、この定義に当てはまる「ジャパニーズウイスキー」は以下の通り。(ただし大手のみ。)

サントリー
「響」「山崎」「白州」「知多」「ローヤル」「スペシャルリザーブ」「オールド」「季(とき)」
ニッカ
「竹鶴」「余市」「宮城峡」「カフェグレーン」
キリン
「富士」(シングルグレーン、シングルブレンデッド)
※「知多」「カフェグレーン」「富士シングルグレーン」はトウモロコシ主体のグレーンウイスキーですが、麦芽も使われています。

大手以外の蒸溜所では「シングルモルト」の記載があれば、ジャパニーズウイスキーということになります。
個人的には「リザーブ」や「オールド」に海外原酒が使われていないことには驚きました!

この定義、今のところはあくまで自主基準で、守らなくても法律上問題はないのですが、これが国内ウイスキーの品質向上につながり、いずれは法整備されればいいなあと思います!

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